山梨県 清里・清泉寮で、 宿泊型の家具教室を、初めて開催してから16年の月日がたちます。 そもそも、1泊2日のステンシル教室で、オリジナルの白木教材にヤスリがけをしていたとき、 参加者の女性たちから ”家具を作ってみたい” との声があったのがきっかけでした。 素人さんに家具を作らせるなんて、至難のワザだとは思いつつも、何とかできないだろうかと考え始め、でも簡単な日曜大工の延長なんて感性のないものは絶対したくない私たちは、無謀にも普段オーダーで制作している家具と何ら変わらない、制作方法・素材・デザインで家具教室開催に挑戦しました。 2泊3日の中で、完成にもっていかなければならないプレッシャーに、押しつぶされそうになりながら、最終日には疲れすぎて食事ものどをとおらないほどでした。 そうやって試行錯誤をくりかえし・・・ 雑誌「私のカントリー」では特集を組んで取材され、一気に全国から問い合わせ・参加希望が殺到しました。 多い時は年間8回の開催というときもあったほどです。 その中で私たちが、他に絶対に負けないと自負しているのは、制作デザインを毎回変えつづけていること、アメリカ・オレゴン州のパイン材とイギリス・フランス直輸入のパーツ類を使用していることです。 参加費用が高いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それ以上の価値がある教室をしているつもりでいます。 参加者も多様になり素人の方から、プロを目指す方、プロの方(?)までさまざまです。 特に、女性たちから熱い支持を受け、こんなに長い間教室を開催してこれたことに本当に感謝しています。
以下、家具教室の様子へと続きます。
家具教室 第1日目
いよいよ家具教室初日を迎えました。 開始時間の午後1時に合わせ、参加者がぞくぞくと集合してきます。 今回は9組で総勢20名になりました。 ファミリーでの参加も多くにぎやかです。 参加者の方たちはサンプルの実物を熱心にながめ、用意されている部材を前に期待と不安の入り混じった表情をしています。 最初は小さなパーツを組み立てていきます。 引き出しの組み立ては、ハタガネを上手に使っていけば、一人でもスムーズに組み立てられます。 ひとつひとつをていねいに着実にしないと、あとで引き出しが本体に入らないということになるので、注意が必要です。 次から次へと運ばれてくる部材と格闘する参加者たちですが、この時点では先の予測がまったくたたないので、不安が広がります。
手際よく引き出しの組み立てをしているのは、今回2回目の長田さん。 3ファミリーで来てくれました。 制作は、それぞれお父さん一人でがんばります。
三重県の紀伊さん。 前日徹夜だったご主人に変って、初日はほぼ一人で制作していました。二人の息子さんも一緒に・・この方はもう5・6回目の参加。
今回一番遠方からの参加は、福岡県の女川さん・初参加です。 息子さんと一緒ですが、彼は試験前ということで、手伝いはあまり期待できず・・
第2日目
前日はあまり遅くまで作業しませんでした。 これがのちに吉となるか凶となるかわかりませんが・・・。 いよいよ本体の組み立て作業がはじまり、会場がなんだか手ぜまに感じるようになってきました。 ここにきて個人差がはっきりと出てきます。 遅れている方は、私たちが積極的にお手伝いします。 しかし集中力を絶やさず作業するのは、とてもむずかしいことです。 さすがに疲れがでてきます。 それに反し手元はミリ単位で気を配らねばなりません。 みなさん真剣そのもの・・・ 最終日をゆとりを持って迎えられるかは今日の作業次第です。 あせりもだいぶ出てきて、小さな失敗があちこちで見られるようになってきました。 とりかえしのつかない失敗のないように、目を配り、耳をそばだてます。 サンダー・ジグソー・ドライバードリルと正しい使い方をされていないとすぐにわかります。 なんだかウサギになったみたいですが、間違った使い方はけがのもとにもなるので、私たちにとっては大切な仕事です。 変な音がしたらただちにストップして、指導します。
本体の組み立て作業。 深沢さんも2度目の参加です。 このときは、ジャストタイミングで子供の世話に追われていた奥様が、手伝いにきました。
本体の足の部分の組み立て。 手前左の愛知県の佐溝さんは、ご主人がリードして奥様と二人で着実に作業しています。
10年ぶり、2度目の東京都の木崎さん。 今回最年長です。 好きな事に没頭していると、みなさん少年の頃のように輝いた顔になるから不思議です。 この日の朝、彼は早起きして清泉寮周辺の写真を、デジカメにおさめていました。 その中の一枚を一緒に紹介します。
ジグソーを使った作業。 自分の描いたラインどおりにカットするのは、大変です。
第3日目
とうとう、最終日になってしまいました。
泣いても、笑っても、どうにか仕上げをしていかなければなりません。 と同時に、扉にガラスが入ったり、金具をつけたりで、自分の作品が又違った表情に変っていくのも、大きな楽しみになる日でもあります。 ガラスもフラットタイプとゆがみガラス、金具も数種類の中から、それぞれが思い思いに自分のイメージに合わせて選んでいただけるようにしたことも、自分らしさを表現する良い機会になったのではと思います。
常に皆さんをリード(?)するように作業をすすめてきた長田さんは、いよいよ本体の天板を取り付けます。 本体内部に見える4本の丸棒は、ワイングラスを吊り下げるためのものです。
疲れがピークにきているにもかかわらず、気の抜けない作業です。 本体サイドにルーターで飾りの溝をいれます。 息を止める様にして、慎重に動かしていきます。
深沢さんのとなりでにこやかに笑っているのが、初参加の若尾さんです。 長田さんと深沢さんに誘われ参加してくれました。 箱に入った真新しいmy tool たちを、大事そうに使ったりと、楽しんで制作していました。
チェックシャツの大柴さんは、最終日にご家族と合流しました。 黙々と作業に没頭しています。
紀伊さんのご主人です。 扉のガラスをはめこむ作業の真っ最中。 となりでこっちを見ている二男のたいき君は、遊んでほしくてお父さんを困らせています。
抜群のコンビネーションで、いち早く仕上げの金具付けをしている佐溝夫妻。 完成目前です。
こうして制作開始から、あっという間の3日間が過ぎ、疲労と充足感で幕を閉じます。
出来上がった作品を自分たちのお部屋に入れ、使っていく中で月日が経ち、質の良いパイン材がその色合いを飴色に変えてゆきながら、その人の生活に溶け込んでいきます。 自分の手で作り上げたという ゛思い゛ が、なおのこと作品を大切にする ゛想い゛ につながるのだと思います。
私たちの家具教室の魅力は、完成度の高いプロフェッショナルな作品に、経験の浅い人たちがチャレンジして完成させる醍醐味を味わえることではないでしょうか! このHP・blogを通じてまた新たな参加者が現れるのを楽しみにしています。